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カラオケ

  • 執筆者の写真: foodbank-8
    foodbank-8
  • 2023年2月4日
  • 読了時間: 4分

Y君が、私のところにやってきたのは、幼稚園の年長のときでした。

遊ぶと一人で盛り上がり、スーパーに行くと急に走り出してどこかへ行ってしまう。

小学校に入っても、授業中立ち歩いたり、友達とケンカが絶えませんでした。

友だちが欲しくても友だちができないY君。

中学は、受験して私立中学に入りました。

バスケット部に入り、友だちが作れると、Y君は嬉しくてLINEを打ちまくりました。

でも、あまりに打ちすぎて、LINE仲間からうざいと言われ、そのLINEから外されてしまいました。


勉強も進度が速く、宿題が多くため、集中できないY君は宿題をこなせません。

勉強の意欲がすっかりなくなってしまいました。


バスケット部でも、ひとりぼっち。

誰も相手にしてくれません。

しだいに、Y君の言葉が荒れてきます。

家で、お母さんが何か言うと

「おい」「こら」「てめえ」

というようになりました。


Y君は、学校に行かなくなりました。


家では、ゲームとyoutubeのみ。

お母さんが、ゲーム機を取り上げたら、刀で壁を叩き、ぼこぼこにして、

「お前を殺すぞ。」

と、首を絞めるふりをしました。

「どうせ、おれなんか障害児だ。生きている意味ないんだ。」

と叫んだY君。


家から出なくなったため、毎週私の外来に来ることにしました。

最初は、私の外来に来てくれていたのですが、

昼夜逆転してしまったY君は、

「誰にも会いたくない」

といって、まったく外に出なくなり、外来はお母さんだけになりました。


私は、お母さんの話を聞いてあげることしかできません。

でも、お父さんはいろいろ努力して、休日に、一緒に映画に行ったりして、Y君はお父さんには心を開いていました。


中学2年になり、お父さんが、車で送って何とか学校に行くようになりました。

授業は出るけど、宿題はいっさいしません。座っているだけで精一杯のY君。

中学は、毎日、補習、補講があり、全ての点数が張り出されます。


クラスの同級生の中には、

「あいつはバカだ」

と陰口をたたく人もいます。


「ぼくには友達がいない。」

というY君は、夏休みも一人ぼっち。

気分転換のためにと、オーストラリアの短期留学に行ったY君は、日本に戻ってから、変わりました。勉強をやるようになりました。

でも、数年のブランクはやはり大きく、勉強はついていくことはできません。

学校は、行ったりいかなかったり。


午前3時までゲームをしているため、学校に行っても、授業中、ずっと寝ていました。

席替えがあったら、「お前の隣イヤ」と露骨に言われてしまったY君。

学園祭でも居場所がなく、一緒に回る友だちがいません。

結局、お母さんと二人だけでまわりました。


高校をどうするか悩みましたが、

「残れるものなら残りたい。」

というY君の意思を尊重し、高等部に上がりました。


高等部でも、成績は相変わらずでしたが、友だちができました。

一緒に街に出かけたり、カラオケに行ったりしました。

学校が少しずつですが、楽しくなってきました。


高校2年は、何とか上がれました。

でも、成績は振るわず、赤点が増えていきます。

それでも、学校は休まずに通うようになりました。


そんなとき、突然不幸が訪れます。


Y君の最大の理解者だったお父さんが、急逝しました。

失意の中、高校の三者面談では、留年するか、高校を変えるかと言われてしまいました。

どん底まで突き落とされたY君。

通信制の高校に変えましたが、ほとんどベッドに横になったまま。

部屋から出なくなりました。

食事も1日1食。納豆ご飯だけです。


そんな状況でも、外来に来てくれるY君。

私が、Y君に、将来何をしたいかと聞いたら、「大学に行きたい」といいました。

お母さんは、高校と相談し、大学の資料を取り寄せ、面接と小論文で受験できる大学に願書を出しました。


受験当日、お母さんは、車でY君を連れていき、なんとか試験を受けることができました。

そして、合格しました。

合格してからY君は変わりました。


高校の卒業式に出席し、同級生と遊びに行きました。前の高校の友だちともカラオケに行きました。

大学では、アカペラサークルに入り、カラオケに行って、友だちと歌っています。


お姉ちゃんとけんかしたときに、

「僕は、コミショウだから、友だちを作りたくてもできないんだ!」

と叫んで、小学校からの苦しかったこと、つらかったことを泣きながらぶちまけたY君。


友だちとカラオケ行くのは、

「歌うって、あまり会話しなくていいから楽。」

ということでしたが、

最近は、

「歌って、コミュニケーションのネタとして、使えるようになってきた。」

ということです。


学園祭では、アカペラコーラスの発表もしました。

大学も、順調で、外来は今日で卒業です。


天国のお父さんも、笑っていることでしょう。


(紹介にあたり、承諾をいただいています)




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